近年の高度情報化社会への変化に伴う携帯型電子機器の普及により,
携帯電子機器製品の高機能化,小型化が急速に進んでいます.
携帯機器の高機能化,小型化は,より小型軽量で大容量な携帯向け電源を求めています.
そこでエネルギー密度が高く発電容量がリチウムイオン二次電池の十数倍ある直接
メタノール型燃料電池(Direct methanol fuel cell:DMFC) が注目されています.
しかし,DMFC は現状で携帯電話を十分稼動させるだけの電力と小型軽量化を
両立できていません.
携帯機器用小型燃料電池は,小型軽量であること,十分に安全であることなど
の制約条件のもとで長時間発電するために最大限の発電効率を得ることが求められています.
そのため小型発電システムとして最適な設計を行う必要があるのですが,
燃料電池の性能は材料因子,構造因子,動作条件等様々な要因によって左右されるため
最適な設計が行われていません.
そこで,それらの要因を統合的に解析し構造設計に生かせば,
軽量コンパクトで長時間発電可能な携帯型電源を開発できる可能性があると考え,
電極内物質挙動を詳細解析し超小型燃料電池システムを最適設計することを目的としました.
多孔質電極体での各燃料濃度分布と電流密度関係の基礎的検討を目的とし, カーボン多孔質体電極を拡散層と触媒担持層である反応層の二層構造と捕らえ二次元差分法を用い定温条件下,反応を考慮して,電極内の流体解析を行いました(図2).
今後,マクロスケールである流体解析とナノスケールである多孔質体内の分子挙動を
マルチスケールに解析することにより,電極内物質挙動を明確にし,超小型燃料電池を最適に設計することを考えています.
今後この研究が進めば,電池がより小型化長寿命化でき,
携帯機器が長時間快適に動作できるようになり,
ユビキタス社会の実現に大きな役割を果たすでしょう.