実環境を考慮した
光伝送システムの設計・評価システム構築


研究背景と目的

 近年,膨大なデータ量が流通するユビキタスな情報社会が進展しつつあります. 通信装置内のプリント配線板に目を向けると,CPU等の電子LSIの性能は数GHzで動作する物が商品化され,その処理能力は着実に向上しています. 一方,情報伝達を担うメタル配線において,信号の高速化に伴うノイズ・クロストーク・電磁輻射・消費電力の増大がシステムの性能向上のボトルネックになり始めています. これらの問題を解決する手段として,ボード上に光導波路薄膜を作製し,LSIチップ間通信を行うことが考えられています.


 このようにチップ間光インタコネクションが要望される中で,我々は光導波路の設計パラメーターの最適化に関する研究を行っています. 従来の設計手法では考慮されていない,製造誤差や実環境での温度変化も含めるものです. 主にシミュレーションを用いた手法をもちいることで,設計期間の短縮化にも対応していけるシステムを目指しています.

研究内容


 本研究では,光伝送システムの伝送パワー損失評価を数値解析シミュレーションにより行うことを目的とします. そして,@作成荒さによる伝搬損失の評価 A素子の発熱による構造変化及び屈折率等の材料物性変化による伝搬損失評価 を行っています. 解析には,熱・構造解析をFEM(有限要素法)にて行い,光伝搬解析をFDTD(有限時間差分領域法)や,BPM(ビーム伝搬法)を用いての連携解析(図2)です.
 例として,実環境を想定して高温度下での基板の反りによる光の伝搬損失の発生を(図3,4)に示します.  左が基板の反りがない状態での,右が基板のそりが存在する状態での光の伝搬です.

 

将来展望

 CPU-メモリ間の通信速度の向上により,コンピューターの性能が飛躍的に向上することが考えられます. 特に,ベクトル演算のような大量のデータを転送する演算には非常に有用であると思われます. また,携帯電話のようなEMC(電磁的な不干渉性および耐性)対策が困難である製品に対しても,高性能化が進むと思われます.


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