低融点金属含有による
高伝導導電性接着剤に関する研究

研究背景と目的


はんだの代替として注目されている技術の一つに,導電性接着剤がある.導電性接着剤は導電性を持った金属フィラーをエポキシ樹脂などの有機バインダーに均一分散させた有機・無機混合系の材料であり,金属フィラーにより導通を確保し,有機バインダーにより機械的強度を保っています.エポキシ樹脂は熱硬化性のため,低温接合が可能でありながら,高温に耐えることができるという従来のはんだにはない特徴を持っています. しかし,その導電性は金属フィラーの接触に依存しているため,鉛フリーソルダよりも機械的特性,電気・熱伝導性が低く,これらの特性向上が課題となります.

本研究室では,熱伝導特性および電気伝導特性の向上を目的として,メインとなる銅フィラーに低融点金属であるSnBiの架橋形成を伴う導電性接着剤を提案しています.

研究内容

導電性接着剤中の導通メカニズムは,主にベース樹脂の硬化収縮によって,導電フィラー同士の接触が促進されることで導通が確保されるものと考えられています.その際の,金属フィラー間の接触抵抗やフィラー間に残存する樹脂層による抵抗の存在が,金属結合されるはんだ接合と比較して電気・熱伝導特性の劣る原因であると考えられます.そこで,金属間の接触面積の向上と金属結合による接触抵抗低減のため,低融点金属による金属フィラー架橋構造を提案しました.

本研究では,SnBiフィラーを配合した導電性接着剤の特性を評価し,有限要素法(FEM)解析を用いてメインフィラーや低融点金属の体積含有率,粒子サイズ,架橋径などの材料・構造パラメータが接合部全体の伝導率にどのような影響を与えるかを検討するとともに,実験的にも材料条件やプロセス条件を変えて金属フィラー架橋構造を形成することにより,熱・電気伝導特性への影響について検証しています.

将来展望

この研究が進めば,従来ソルダリングが不可能であった熱耐性の低い部品の実装が可能になるため,さらに幅広いデバイスの実装によって,大規模センサーネットワークに基づくトリリオンセンサ構想やあらゆるものににつながるIoT社会の発展に貢献できると考えられます.


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