ニューラルネットワークによる
視覚検査システムの構築

研究背景と目的


現在,IT産業,ユビキタスやロボット産業,燃料電池自動車など,ハイテク化の流れにおいて産業から家電,輸送機器等あらゆる製品に電子デバイスは必要不可欠なものになっており,今後もその数はますます増大する傾向にあります.これらの電子デバイスへの部品の実装はソルダリング(はんだ接合)が主流となっていますが,ソルダリング不良が一ヵ所でも存在すると機器の動作不良や更には事故の原因にもなるため厳しい検査が求められます.

しかしながら,現在の多くの工場ではソルダ接合部の外観検査は目視検査に頼っているのが現状であり,熟練検査員の技術にかかっているところが大きくなっています.その一方で電子機器の小型化はますます顕著であり,実装基板の微細化,高密度化は加速の一途を辿っており,疲労や検査員の熟練度によって検査の高信頼の維持が困難です.

そこで,人間に変わって高速かつ正確で,安定した信頼性を持つ検査システムの開発が望まれています.しかも,近年の多品種少量生産の現状から,同一製品の検査を繰り返すのみでなく,多種多様な製品に対して柔軟に対応できる汎用性に優れた自動検査装置が必要となります.本研究は,これらの要求を満たすような自動検査システムの開発を行い,高い信頼性を持つ高品質な製品の製造を実現して,日本の産業の発展を後押しすることを目的とします.

研究内容

スキャナによりラインCCD方式で実装基板をスキャンし,その画像の中で対象とする接合部を切り出して,その切り出し部位をニューラルネットワークへの入力として用います.検査基準を教示する際に,良品とソルダ量過少品の境目のサンプル(ソルダ量過少品に近い良品,良品に近いソルダ量過少品)を教示に用いることによって良品・不良品の際の検出を含めた良品判定を行うことができると考えました.そこで,このサンプルを用いて追加学習の考え方を基板上に表面実装された抵抗のソルダリング接合部の良品検査に適応します.

追加学習とは初回の学習で認識されなかったサンプルを人間の手によって良/不良の判定を行い,良品なら良品として,不良品なら不良品として新たに学習サンプルに加えることです.追加学習を何度も行うことにより,良品カテゴリー空間や不良品カテゴリー空間を広く覆う適切な学習空間が形成でき,良品と不良品の境目が際立って認識率が向上しました.

将来展望

この研究が進めば,検査過程を含めた工場の無人化が可能になり,疲労や熟練不足による人為的なミスを排除した信頼性の高い製造工程が実現します.


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