国際溶接技術者(IWE)コースについて

マテリアル生産科学専攻 生産科学コース
国際溶接学会(IIW)認定 国際溶接技術者(IWE)コース

1.国際溶接技術者とは?1)

溶接技術は,素材から製品の組み立てに至るものづくりの中核を成す生産加工プロセスとして, 自動車,車両,船舶,機械,建築,橋梁,エネルギープラント等あらゆる製造業分野に浸透し活用されている. しかしながら,溶接技術は未だ完成された技術ではなく,対象とする素材の種類と形状によって適切な溶接法とそのパラメータを選択する必要があり,また,適切な前工程と後工程の処理,さらには適切な品質検査を実施しなければならない. そして,そこには必ず効率とコストを考慮に加える必要がある. このように,溶接技術は,適切な施工管理の下に初めて安心・安全で適正な溶接部が得られるのである.

図2 ISOで特殊工程として定義される溶接
図1 ISOで特殊工程として定義される溶接

一方,国際発注・受注はもちろん,工場などの生産拠点のシフト,国境を越えた労働者の往来など, ヒトやモノの移動・交 流が急激に進展し,グローバルなものづくりが常識となりつつある. このような背景の下,あらゆるモノの品質や性能,技術を評価し,使用する上で国際的に整合した基準を整備することが急務となり, 品質マネジメントシステムを規定する国際標準ISO 9000sが発行された.



図3 溶接に関わる製造プロセスの品質管理

国際標準ISO 9000sでは,溶接は「その品質と性能を試験検査だけでは完全に検証することができない」特殊工程として定義され, このため「溶接部の品質を確保する方策と道筋を明らかにする」ISO 3834がさらに発行された. ISO 3834では,溶接施工法の事前確認や施工中の管理,試験・検査,工事記録の保管などが規定されるとともに, 工事に関わる溶接管理技術者・溶接技能者は製品として確保すべき品質レベルに応じた能力や技量を有している必要がある,ことが謳われている. これを保証するためにISO 14731「溶接管理-管理技術者の任務と責務」が発行され,品質管理上,溶接管理技術者が対応すべき項目が明記された(図2参照). なお,ISO 3834とISO 14731は,現在,JIS Z3400:1999とJIS Z3410:1999としてJIS規格にもなっている.



ISO 14731(JIS Z3410)では,溶接管理技術者をその職務範囲によって次の3つに分類している.
1,包括的技術知識を有する技術者
2,特定技術知識を有する技術者
3,基礎技術知識を有する技術者

このようなISOにおける溶接一連の規格発行に連動して,国際溶接学会(International Institute of Welding, IIW)がディプロマ資格(終身資格)として整備し,
1,IWE (International Welding Engineer) 工科系4年制大学卒以上
2,IWT (International Welding Technologist) 工業高等専門学校卒以上
3,IWS (International Welding Specialist) 高等学校卒以上

の各資格を1998年に制度化した.
これが国際溶接学会(IIW)によって認定される国際溶接技術者資格であり,2006年末現在,世界で34,000人以上,日本においても2,100人以上が取得している.
参考文献
1) 平田: IIW国際溶接技術者資格制度特認コース, 溶接学会誌, 75 (2006), No.1, pp.50-80.
2) C. Smallbone, et al: 国際溶接学会IIWによる溶接情報の普及とデジタルメディアの利用, 77 (2008), No.1, 17-21.

*以上、「マテリアル生産科学専攻生産科学コース 国際溶接学会(IIW)認定 国際溶接技術者(IWE)コースの開設について」(2008年4月4日・IWEコース開設ワーキンググループ作成)より転載、一部2010.2月現在の情報に変更
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